民主党が問責決議案を出さない本当の理由 - 内閣官房機密費
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問責決議案を民主党が出すぞ出すぞと言いながら、それを必ず先延ばしにして出さないのは、本当は何が裏にあるのだろうかと考えたことはあるだろうか。今はタイミングが悪いとか、次の状況を見てとか言い、適当に説明を流してその場を逃げている。昨年は、問責決議案の戦略について国民に説明をしていたのは菅直人だったが、現在ではもっぱら幹事長の鳩山由紀夫がカメラの前に立っている。今年の通常国会に入ってからだけでも、少なくとも3回か4回は問責決議案提出の政局の場面が報じられたが、その都度、提出は見送られて先送りされた。4月頃だっただろうか、朝日新聞の政界面記事の中で、問責決議案について踏み切り決行を主張した菅直人と慎重論の鳩山由紀夫が党内で対立したという情報が漏れ出たことがあった。問責決議案の判断は小沢一郎が握っている。何が行われているのか、どうして「出す出す詐欺」が行われているのか、普通に考えれば提出があってもおかしくないのに、何故それがハプンしないのか、テレビ報道や新聞記事を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて答えを探さないといけない。 

政治をネットで論じている多くの者が真相を察知できないのは、彼らが民主党を支持し、民主党の口上や説明を真に受けて信用しているからである。小沢一郎の信者だから小沢一郎の説明を信じ込む。今度は引っ込めたが次は必ず問責決議案の真剣勝負に出て解散を迫るだろうと期待して見ているから、何度でも小沢一郎の「理由説明」を頭から信じるのである。そしてマスコミでもネットでも裏の汚い真実を誰も暴露しないから、裏を読む人間がいないから、民主党の言うがままが「真実」としてまかり通る。自民党の伊吹文明は、昨日(6/7)の山口宇部の講演会で、民主党が問責決議案を出すぞ出すぞと毎回言うのは、問責決議案を出して解散に追い込むのが目的ではなくて、実は民主党の党内を引き締めて小沢一郎の求心力を維持する党内統治の手法なのだと説明した。この説明は「問責決議案出す出す詐欺」の政治に対する表向きの解説として正しい。目的は外になく内にある。だが、提出されれば、マスコミが民主党支持に回り、福田政権が完全な死に体になって自民党が混乱するのも事実であり、できれば提出を回避させたいのも本音なのだ。

裏で何が行われているか。カネが動いているのである。問責決議案を出すぞと迫り、民主党がそれを引っ込めるたびに、1回につき2億円ほどの現金が内閣官房機密費の金庫から出されている。この世の中はカネだ。政治ブロガーを自称する者たちは「世の中はカネだ」という真理を人生の経験の中で知りながら、その単純で普遍的な社会法則を眼前の現実政治の分析に適用しようとしない。清い心を持った天使たちが政治をやっていると思っている。宗教の信者とは恐ろしいものだ。小沢信者は小沢一郎を清廉無比な聖人君子だと錯覚している。内閣官房機密費は領収書不要の国家予算であり、何に幾ら使っても証拠は残らないし、誰からも追及を受けることはない。この金は主に国会対策とマスコミ対策に使われる。支出の主たるは伝統的に野党に対する懐柔工作資金なのである。70年代後半だったか、与野党伯仲の国会状況があったおり、自民党の国対は毎晩のように公明党書記長の矢野絢也を赤坂の高級雀荘に誘い、麻雀接待漬けにして、わざと負けてやって一晩に1千万円の現金を渡していたと言われていた。この話は永田町では公知の事実で、週刊誌にも記事になって載っていた。

問責を出すぞ出すぞと福田首相に迫る。出すぞ出すぞと言いながら、実はカネをせびっているのである。官房機密費をまた2億円よこせと手を出しているのだ。内閣官房長官室の金庫から現金の札束を紙袋に入れて持って来いとせがんでいるのだ。1回2億円が入れば、それで問責は回避してやる。それだけではない。自民党からも要求は出る。例えば、2月末の衆院予算委がイージス艦問題で揉めた後、何故か予算案が送られた3月の参議院の予算委で民主党は審議拒否に出て一ヵ月近く国会を空転させた。参院予算委ではイージス艦問題は追及されず、石破茂が追い詰められる場面もなかった。福田政権にとっては最高の恵みの雨で、窮地を脱することができた。3月に国会は空転して開店閉業状態となり、4月に制度施行される後期高齢者医療制度の審議もなく、医療問題は国会では手付かずのまま放置された。国会の外の政治番組で何度も同じ暫定税率の堂々めぐりが議論され、そのたびに政治ブロガーたちが「小沢がんばれ、解散に追い詰めろ」と無邪気な声援を送っていた。「ガソリン国会で何が悪い、権力を取るのが野党の仕事だ」と言い張っていた。格差問題も一度の真剣に国会で議論されることはなかった。

昨年の民主党は、経団連会長の御手洗冨士夫をキャノン栃木工場の偽装請負問題で国会に証人喚問すると息巻いていた。去年の参院選のマニフェストの公約が「格差をただす」であり、選挙に圧勝して過半数を取った参院で御手洗富士夫の泣き顔が見れるかとわれわれは興奮したが、いつの間にかそれは立ち消えになり、代わりに新テロ特措法と大連立騒動の政局で国会の時間と空間が埋められた。なぜ御手洗富士夫の証人喚問がなかったのか、口の堅い新聞記者や政治評論家たちの代わりに口の軽い私が解説しよう。官房機密費のカネが回ったからである。官邸から小沢一郎にカネが出る。その謝礼が経団連から自民党に政治献金として出る。言わば、格差問題追及の証人喚問を材料にして自民党と民主党がビジネスをしているのだ。官房機密費は国民の税金である。自民党は税金を野党にバラ撒いて財界の利益を守り、利益を守ってくれた財界は自民党に謝礼のカネを献金する。WinWinとはこれのことだ。問責決議案は小沢一郎にとって打出の小槌であり、3年間変わることのない参院の過半数体制は金のなる木なのである。誰もその真実を言わない。言う者がいない。昔はいた。立花隆が元気だった頃は、週刊誌上で必ずそうした裏読みを披露していた。

「どこに証拠があるんだよ」と私は思いながら、同時に、「なるほどそういうことか」と深く頷き、「さすがに立花隆は他の凡庸な政治評論家たちとは違う」と感心させられていたものだった。カネというシンプルでベーシックなファクターをキーにして政治を読む。立花隆は常にそれをやっていた。不審な動きが与野党間であった場合、そこにカネが動く気配を立花隆は必ず嗅ぎ取っていた。問責決議案の「出す出す詐欺」の裏側にはカネがある。昨年の前半は政治家とカネの問題が噴出した季節だった。夏の参院選の争点の一つにもなった。松岡利勝と赤城徳彦の二人が特に追及の矢面に立たされたが、不思議なことに、政権与党の大物に政治資金規正法違反の疑惑が上がったときは、必ずセットのような形で小沢一郎の政治資金規正法違反疑惑が夜のニュースで報道された。保有不動産の名義がどうのこうのと訳の分からない話が突然出て、続報を見守ったがそれっきりで、その後は何も続かず、小沢一郎が「法律に従って適正に処理する」と記者会見して終わりだった。その報道を私が見ながら思ったことは、他の誰もも同じだろうが、検察が選挙前に世論への影響のバランスをとっているということで、また、本気になれば当局が摘発できる「脛の傷」を小沢一郎が隠し持っているという闇の事実だった。

そこから少し考えれば簡単だが、要するに巨額の政治資金を作って隠し持つ裏金捻出隠匿装置を小沢一郎は失ったのである。国税と検察に押さえられて、天下に公表され、悪いこと(政治資金規正法違反行為)はできなくなり、裏の資金口座を持てなくなったのだ。やったらまたマスコミに流すぞ、今度は手加減しないぞ、事情聴取に動くぞと、国税と検察に釘を刺されているのである。小沢一郎とカネの問題については、その行動様式を簡単に理解できる解の鍵がある。小沢一郎は議員を買収する。カネを撒いて自分の側近勢力を維持する。この手法は田中角栄直伝のものであり、オヤジの虎の巻であり、小沢一郎にとっては憲法なのだ。前に、現在の中国共産党の幹部たちが意思決定において常に「ケ小平同志ならどう判断選択するか」を基準にしているという見方を私は示した。党中央政治局常任委員会における姿なき議長はケ小平である。ケ小平は生きている。胡錦濤や温家宝の内面で生きていて、彼らの政策決定を原理的に拘束している。路線逸脱させない。「ケ小平同志はこう言った」「ケ小平同志はこう決断した」が彼らの憲法なのである。ケ小平亡き後の中華人民共和国は、まさに諸葛孔明亡き後の蜀帝国に他ならない。遺言が支配する。温家宝にとってのケ小平が小沢一郎にとっての田中角栄である。神であり、憲法である。

だからオヤジと同じことをやるのだ。オヤジは常に目白の来客者に現金の入った茶封筒を手渡した。大蔵と通産の若い官僚たちに気前よく札束で膨れた封筒を配った。ヨッシャヨッシャと小遣いを与えた。官僚たちは田中角栄のカネ撒きカリスマに心を奪われ、田中角栄の下僚として積極的に臣従するようになった。金の恩以上にありがたいものはない。世の中はカネだ。昨年から今年の国会にかけて「問責決議案出す出す詐欺」のビジネスで、小沢一郎は少なくとも20億円の官房機密費を懐に入れている。そのカネは何に使うのか。9月の民主党の代表選に使うのである。民主党の代表選での議員の買収工作に使うのだ。鳩山Gと旧民社系を押さえる。枝野幸男を担ぎそうな若手面々、長妻昭を担ぎそう若手面々、これらを押さ込むべく手を打たなければならない。民主党の若手議員は金が欲しい。自民党も民主党も、政治家は金と権力を手に入れるために議員をやっている。彼らは遊ぶ金が欲しい。山本モナを京都の料亭宿に連れ込んで遊ぶ金が欲しい。銀座の女を都内のマンションに住まわせる金が欲しい。男が欲しいものは金と女だ。政治家は常人の千倍の欲望を身体に滾らせている。10億円あれば、一人に2千万円配ったとして50人の頭数を買収できる。金で転ぶ50人を買収できれば代表選で勝つことができる。小沢一郎にその「政治の定石」を教えたのはオヤジ(角栄)である。

20億円のうち、10億円は代表選に使う。あと半分の10億円はその後の政界再編の資金にする。同じく買収工作である。