反中プロパガンダ゙に狂奔するテレビ朝日とユネスコ憲章の警告

世に倦む日日より http://critic3.exblog.jp/8559764/
現在のテレビ朝日の中国報道は、イラク戦争開戦当時のCNNと同じほど極端に偏向した内容になっている。連日の胡錦濤主席訪日関係の報道は、まるで北朝鮮から来た外交使節を監視しているようであり、あからさまに敵視して、胡錦濤主席の一挙手一投足を悪辣に貶めて歪める報道姿勢に徹している。国家主席は元首であり、天皇陛下と同じ国家のシンボルである。天皇陛下が訪中や訪韓したときに、その式典演説や親善行事をこれほど酷く現地のメディアに貶めて報道されたら、それを知った日本人は怒りで震えが止まらなくなるだろう。昨夜(5/8)の「報道ステーション」では、中国のこの間のチベット問題と北京五輪問題への対応を評して、「第一の敗北」と「第二の敗北」という表現を使い、国際政治の情報戦における中国の「敗北」を強調して伝えていた。フジテレビや産経新聞と同じかそれを上回る過激で露骨な反中報道に驚愕する。

テレビ朝日によれば、3/14に起きたラサ市内での暴動の映像の放送が「第一の敗北」であり、世界を回る聖火リレーで居留中国人が五星紅旗を林立させたことが「第二の敗北」であると言う。いずれも、中国政府が自己の正当性を国際社会に訴えながら、国際世論に支持されなかったから「敗北」だと言うのである。私は、この「敗北」報道は著しく偏向した反中プロパガンダであり、中国国民の反日感情をさらに高め、日本の平和にとって危険な影響を齎すものであると思う。テレビ朝日による「情報戦」の評価は、最初からテレビ朝日自身がチベット側に立っていて、報道機関としての客観的で公正中立な立場からの判定では全くない。中国を敵視する反中宣伝機関が中立のジャッジなどできるはずがなく、CNNのイラク戦争報道が一方的な米軍の正義と勝利をプロパガンダしていたのと同じだ。中国側からすれば、この「敗北」報道は不当な決めつけである。

もし仮に、中国が長野に留学生を大量動員しなければ、聖火リレーの沿道はチベット旗だけが振られる図となり、それを撮影放送するテレビ朝日は、日本国民はこのように熱烈にチベットを支援していると報道で言い、中国側の「敗北」を囃し立てただろう。実際のところは、旗で沿道を埋め尽くそうと情報戦の政治を扇動したのは2ちゃんねる掲示板を策謀の拠点とする右翼であり、中国側は仕掛けられた情報戦に応戦して反撃し、数で右翼チベット側を圧倒したのだった。テレビ朝日の報道にとっては、事実がどう転んでも中国は「敗北」と先に結論が決まっているのである。最初から右翼チベット側に立った報道しかしないのだ。これがプロパガンダのシャワーである。シャワーを浴びせられた視聴者は、内面に反中政治意識が培養される。リテラシーの低い一般視聴者はテレビ朝日の報道は中立だと思っているから、簡単に古館伊知郎の折伏を信じてしまう。プロパガンダをフィルタリングできない。

プロパガンダが政治の常識になる。郵政民営化の小泉劇場も同じだった。古館伊知郎によるプロパガンダのシャワーで洗脳された人間にとっては、郵政民営化は正義の政策であり、小泉改革は無謬の国民的選択であり、一票入れる先は自民党以外になかった。郵政民営化に反対する抵抗勢力は悪であり国民の敵だった。国民の敵だから、生放送のスタジオで反論を無理やり妨害して遮断してもよかった。今まさに、あのときの「抵抗勢力」と同じく中国が「国民の敵」に仕立て上げられている。古館伊知郎を筆頭とする日本のマスコミの反中プロパガンダは、中国を敵性国として決めつけ、中国への反感と憎悪を煽るもので、一般視聴者の内面に中国に対する不信と嫌悪を醸成させるものである。戦争はまず人間の心から始まる。ユネスコ憲章は言っている。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」。古館伊知郎がやっていることは、まさに戦争準備そのものである。

ユネスコ憲章は続けてこう言っている。「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった」。持たなくてもよい中国に対する疑惑と不信を持たせているのは誰か。中国に対する疑惑と不信を持たせるように日本の国民を煽っているのは誰か。日中友好で築かれていた「心のとりで」を破壊しているのは誰か。ユネスコ憲章の言葉は真実だ。戦争は国家が国民の知らないところで勝手に始めるのではない。国民がメディアに煽られて戦争しようと言うのだ。侵略戦争を求めるのは常に国民である。日露戦争もそうだった。主戦論の急先鋒は民間の新聞社であり、伊藤のように政府の方に慎重論が多かった。同じ構図は昭和に入っても続き、民間の新聞が国民世論を炊きつけ、それに軍部が便乗して侵略戦争の謀略を仕掛け、その既成事実を政府が追認した。戦争世論を炊きつけて扇動した先鋒が朝日新聞だった。

ユネスコ憲章に従えば、われわれ日本国民は、共産党独裁という異質な制度で国を統治している中国を認めなくてはいけない。相手の立場を認めなくてはいけない。そこに言論の自由がないからとか、西側マスコミの取材の自由がないからとか、人権が制限されているからと言って、そのことを相手国を理解する上での障害にしてはならず、不信や敵対の根拠にしてはいけない。それが両国の理解や友好の障害になるのなら、72年の日中共同声明はなく、日中が平和友好条約を結んで国交回復することはなかった。ネットの中で護憲派を名乗る者たちに言いたい。今こそ戦争の危機のときではないのか。ユネスコ憲章を正しく読み、テレビ朝日の露骨で執拗な反中報道に接したとき、これが戦争の始まりだと思わない者はいるのか。況や、最も尊敬が表されて然るべき国家元首が来日しているときの報道である。9条を守る平和主義というのは、9条をペットのように愛玩するフェティシズムではないはずだ。9条の平和主義は日常の現実の中でこそ生きた視線を持たなければならない。

平和主義者が監視し警戒すべきは、政府以上にマスコミでなければならないはずだ。戦争の火種を作り出し、中国への憎悪を煽り立て、日本の外交を中国との冷戦に導こうとしているマスコミこそ、ユネスコ憲章と9条の敵であり、平和に対する真の敵ではないのか。古館伊知郎のプロパガンダは、単に日本国民に対する洗脳や扇動の意味だけではない。公共の電波を使った中国国民に対する挑発行為の意味がある。日本の世論の「代表」を偽装したプロパガンダによって、恰も日本国民全体が甚だしく攻撃的な対中姿勢で固まっているかのような「現実」が作り出される。古館伊知郎を否定するマスコミが現れなければ、古館伊知郎の主張は日本国民の意見や心情の「代弁」になる。当然、中国国民は反発し、反発と反日の声がネット掲示板に上がり、日本に対する不信と敵意が増殖されることになる。不信と敵対の応酬になり、後戻りできないほど強い反日感情と反中感情が固まる。それは政府を動かす原動力になり、軍事予算拡大を支持する世論になり、日本では憲法改正を後押しする世論となる。

今こそ平和の危機のときなのだ。日中が冷戦状態に入るかどうかの境目なのだ。聖火リレーの後、世界の潮流は、春先のような中国叩きのブームは鎮静化の傾向にある。材料を二つ挙げたいが、まず中国に対する侮辱報道をしたCNNのその後の対応がある。CNNのキャスターが中国人と中国製品を侮辱罵倒した問題で、NY在住の中国人がNYの裁判所に謝罪と賠償を求めて提訴、日本では報道されてないが、裁判所はCNNに召喚状を出し、5/8の時点でCNNは原告側に謝罪文を送っている。謝罪の次は補償となるが、要求されている金額は13億ドルである。事件はCNN側の完敗で決着する予想となっている。13億ドルの根拠が面白くて、中国人1人に1ドルの損害賠償をというもので、われわれは苦笑するが、移民の国で訴訟大国の米国では大真面目な話となって経営者は顔面蒼白になる。日本の中国人も日本のテレビ番組でのマスコミ右翼による恫喝や侮辱の発言を見逃さず堂々と提訴すべきだ。テレビ朝日はこの提訴と勝敗については中国とチベットをめぐる「情報戦」の一部として捉えないのだろうか。

もう一つは、国際オリンピック(IOC)の選手委員会が4/24に声明を出し、北京五輪開催を支持し、開会式のボイコットなどをしないように世界に訴えたことである。声明は、北京での開催を決めた7年前の選択を「適切な論拠によるものであり、現在も適切である」と支持。この重大な事実は日本ではテレビでは全く報道されておらず、ほとんどの日本人は知らない。野口みずきが長野で発したコメントと同じであり、長野での聖火リレー直前のIOC選手委員会の声明に沿って野口みずきのコメントが出たとも言える。選手たちは北京五輪を支持していて、北京五輪がチベット問題の政治に邪魔されないことを願っている。原点はここだ。五輪の政治利用だ。これらの流れに加えて、5/7の日本での首脳会談と福田首相による北京五輪支持の声明が世界に発信された。チベット問題で福田首相が胡錦濤主席を牽制する場面もなかった。また、欧州側は自分たちの主導で中国とチベットの対話を実現させた実績に満足している。これが現在の世界の流れであり、「情報戦」の情勢である。これを見ると、テレビ朝日の「情報戦」報道の一面性と政治性が際立つ。

反中プロパガンダで染まっているのは日本だけだ。