残留孤児訴訟で賠償命令 国の責任認める

 兵庫県などの中国残留孤児65人が、日本への早期帰国実現や帰国後の自立支援を怠ったとして、1人当たり3300万円の国家賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁(橋詰均裁判長)は1日、原告61人について請求を認め総額約4億6000万円を支払うよう国に命じた。4人の請求は棄却した。

 孤児を迅速に帰還させる義務や自立支援義務が国にあったかどうかが最大の争点だった。全国15地裁に提起された集団訴訟では、請求を棄却した昨年7月の大阪地裁判決に次いで2例目の司法判断。

 原告は、残留孤児となったのは国策による旧満州(中国東北部)への入植という「先行行為」に起因し、国にはいずれの義務も生じたのに怠ってきたと主張。「孤児は帰国後も日本語が話せず、自立できない。憲法が保障する日本人として人間らしく生きる権利を侵害された」と訴えた。

 一方、国はいずれの法的義務も否定し「原告の主張する権利は抽象的で法的利益ではない」と指摘。原告の被害を「戦争損害」と位置付けて「犠牲を強いられたのは原告だけではない。補償の要否は政府の裁量に委ねられている」と反論した。

 大阪地裁判決は、1972年の日中国交正常化以後、多数の残留孤児の存在を認識し、早期帰国させる条理上の義務が発生したと認定。孤児が中国や日本で被った不利益も認めた。しかし「通常期待される努力を怠るなど義務に違反する行為はなかった」と、行政、立法の裁量権を広く認めて「自立支援義務はない」として請求を退けた。

(共同)
20061201 1112分)

http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006120101000200.html