2006.8.16(その1)
森田実の言わねばならぬ[280]

あまりに愚かな感情むき出しの理性を失った小泉首相の言動――正常な判断力を失った小泉首相を支持し支援してきた自民党・公明党とマスコミの責任を問う

「あらゆる恐怖の中で最も恐るべきは狂気にとりつかれた人間である」(ドストエフスキー)


 中国、韓国などアジア諸国の国民の強い批判にもかかわらず、また、日本の国論が二分されている状況において、8月15日の終戦記念日にA級戦犯を合祀している靖国神社に参拝する小泉首相の異常さに、日本国民はもうそろそろ気づかなければならない。小泉首相を応援するマスコミに騙されてはならない。日本国民全体がマスコミに騙されて小泉首相の行動を支持するようになったら、日本国民は世界から相手にされなくなるだろう。
 中韓両国の国民は小泉首相に対して強い不信を抱き、強い怒りをもっている。8月15日、中韓両国政府は怒りの抗議声明を発表した。隣国の中国と韓国の政府が小泉首相に対して強い不信感をもっていることを日本国民全体が重く受け止めなければならない。
 韓国外交通商省は、小泉首相の靖国神社参拝について「深い失望と憤りを表明する」との報道官声明を発表した。同省の柳明桓(ユ・ミョンファン)第一次官は「植民地支配から解放された日に参拝を強行したことは、韓国国民の感情を甚だしく傷つけた」と述べた。 中国外務省は小泉首相の靖国神社参拝について、「日本軍国主義侵略戦争の被害国の国民感情を傷つけ、中日関係の政治的基礎を破壊するこの行動に対し強烈に抗議する」との非難声明を発表した。
 韓国政府、中国政府とも強い憤りをもちながら抑制的に対応している。これ以上日本との関係を悪くしてはならないと考えているのだ。「大人の外交」をしている。

 外交とは何か。平和を守るために努力することである。とりわけ大切なのは隣国との相互信頼を高めるために努力することである。しかし、小泉首相には隣国との友好関係を深めようという姿勢がない。驚くべきことである。小泉首相は「平和の意識」を欠いている。
 小泉首相の参拝後の記者会見は、歴史に残る“愚かな記者会見”となった。発言が支離滅裂であるだけではない。首相としての品格がない。愚かさ丸出しの記者会見だった。
 毎日新聞は8月15日付け夕刊3面で「小泉純一郎首相が15日午前、記者団に語った靖国神社参拝に関する考えの要旨」を掲載したが、その見出しは小泉発言中にあった「米大統領が止めても行く」だった。愚かすぎる感情的発言である。
 小泉首相は中韓両国の対応を非難しているが、中韓両国政府から自分自身がどう見られているかについて、あまりにも反省がない。あまりに子供じみた対応である。小泉首相は中韓両国政府から“対話しても意味のない相手”と見られているのである。
 小泉政権下、いまの日本の外交は異常である。こうなった責任は自民党にある。公明党にもある。マスコミにもある。この責任は問われなければならない。
 自民党は、隣国から首脳会談を拒否されるような政治家を総理・総裁に選んでいることについて少しも反省していない。公明党も小泉首相を支持してきたことにまったく反省がない。

 より恐ろしいことがある。マスコミが、この“異常な”小泉首相を偉大な政治家に祭り上げてきたことである。マスコミ人はこのことを反省しないのだろうか。恥ずべきことをしたとは思わないのだろうか。そうだとすれば、日本のマスコミの堕落は深刻である。
 8月15日夕刊と8月16日朝刊には、「新・日中戦争」と提唱している学者やジャーナリストがたちの小泉首相の靖国参拝を賛美する談話が載っている。日本のマスコミのなかに「新・日中戦争」を煽る傾向がある。戦争擁護の世論を高めようと画策しているものがマスコミのなかにいる。それも、かなりいる。民放テレビには紛争待望論者が多い。大新聞社にもかなりいる。彼らが小泉首相と安倍官房長官を応援している。
 安倍官房長官は、靖国神社に参拝したかどうか、参拝するかどうかについては言わないという。これは政治指導者としてあまりにも傲慢で横柄である。マスコミは、この安倍官房長官の言論規制に等しい暴言に抗議していない。これでは、民主主義国のマスコミとしての責任放棄ではないか。マスコミの恐ろしいほどの堕落である。
 もしもこのまま安倍氏を次の首相に選ぶとすれば日本の将来は危ないと思う。
 日本は1930年代以後の対アジア戦争の歴史を繰り返すようなことは、絶対にしてはならない。