鳩山新政権の2010年度予算編成についてモルダウが流れます。    

鳩山新政権が発足してまもなく1ヵ月が経過する。各社世論調査では、内閣支持率が70%を突破し、鳩山新政権は圧倒的な高支持率に支えられて順調な滑り出しを示している。総選挙に際して政権のあり方について明確な選択肢が示され、主権者である国民が民主党中心の新しい政権を選択した。

日本史上初めて市民の力による新しい政権の樹立=政権交代が実現した。「無血市民革命」の大業が成就したわけだ。鳩山新政権の樹立は、単に政権交代が実現した以上の意味を有している。

「官による政治支配」、

「政治権力と大資本の癒着」、

「対米隷属外交」

という日本政治の基本構造を根底から刷新する意義を有する「革命」の名にふさわしい大変革が始動したのだ。

既存の利権勢力である「政官業外電の悪徳ペンタゴン」が断末魔の叫びをあげるのは当然である。テレビ、新聞、雑誌メディアの大半が、低劣な民主党批判を展開している。ここで重要なことは、市民が自分自身の目で真実を洞察し、自分の頭でものを考えることだ。日本の市民の力が試される。

2010年度予算編成作業が始まった。民主党は、子ども手当、高校授業料無償化、高速道路無料化、農家個別所得補償など、多くの新規施策をマニフェストに掲げた。これらの新規施策が2010年度から実施される可能性が高い。

新規の施策であるため財源が必要になり、政府支出の無駄排除など、支出削減策を伴わなければ予算規模が拡大し、財政赤字が増大することになる。マスメディアはこの点に着目して民主党攻撃に手ぐすねを引いて待ち構えている。

しかし、麻生政権が極めて緩慢な財政運営を実行した結果、鳩山新政権の財政運営は著しく用意なものになった。麻生政権は総選挙対策として、13.9兆円規模の補正予算を編成して、2009年度予算が大幅に水増しされた。

この補正予算を基準にすれば、予算規模を拡張することなく、大型の新規施策を実施することが可能になる。麻生政権のバラマキ財政政策の影響で、鳩山新政権の予算編成が極めて容易になることは皮肉である。

鳩山新政権は麻生政権が編成した2009年度補正予算を3兆円圧縮する方針を示している。しかし、一方で麻生政権が46兆円と見積もった2009年度国税収入が40兆円程度に減少するとの憶測が強まっている。支出を3兆円削減しても税収が6兆円減少すれば、差し引き3兆円財源が不足することになる。

この歳入不足は国債発行で賄うほかない。財政赤字は拡大することになる。しかし、この赤字拡大は、麻生政権の税収見積もりが甘かったことによるものであり、その責任を鳩山政権に帰すことは妥当でない。

そもそも財政収支は景気悪化局面で悪化する性格を内包している。景気悪化局面の財政赤字拡大を嫌って緊縮財政を実行しても財政収支は改善しない。1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権は、景気が厳しい局面で超緊縮財政を強行して、財政赤字を減らすどころか急拡大させた。

私は「経済あっての財政で、財政あっての経済でない」と繰り返し主張してきたが、日本経済の現局面では、この基本を改めて認識しなければならない。

2010年度当初予算編成では、2009年度の補正後予算と比較して、財政活動が景気抑圧効果を生まないための配慮が必要である。2010年度当初予算が2009年度当初予算と比較して大幅に増額されることは是認される。2010年度当初予算が2009年度当初予算規模に抑制されれば、2010年度の日本経済には強烈なデフレ圧力が生じてしまうからである。

2010年度予算編成にあたって、最優先されなければならないことは、日本経済の改善を誘導することである。この視点に立てば、2009年度に急膨張した財政赤字を削減するための「拙速」な緊縮財政政策は禁物である。短期的な財政収支悪化を容認し、経済の着実な改善を優先しなければならない。景気回復なくして財政再建はありえない。

メディアは財政収支の悪化をあげつらうべく待ち構えているが、財政赤字を大幅拡大させたのは、鳩山政権ではなく麻生政権であることを正確に認識する必要がある。鳩山新政権は自信を持ってマニフェストに掲げた新規施策を実現してゆくべきである。